週刊東洋経済

週刊東洋経済1993.2.27
これから重要なのは
防衛か外交か
1992.11.28 遁刊東洋妓済
小選挙区制度よりも
小派閥制度の導入を

 私は東京の市谷に住んでいて、紀尾
井町の研究室まで通っている。市谷に
自衛隊の駐屯地があることはご存じか
と思うが、毎朝その前を通るたびに、
いやな気分にさせられる。
 毎朝8時ごろ、.四谷駅から駐屯地ま
での道で、不気味な中年男性の洪水と
すれ違う。背広にレインコート姿の彼
らは、防衛庁の事務職の官僚で、お互
いに生き生きとした会話を交わすこと
もなく、黙々と駐屯地へ向かう。
 国民は彼らが中で何をしているか、
ほとんど知らない。駐屯地の門の前に
は、兵士が銃を持って立っていて、こ
ちらをにらみ、気軽に声をかけられな
い。.一般市民など、敵と思われでいる
かのようだ。彼らはそもそも誰のカネ
で働いているのか、自覚しているのだ
ろうか。そのくせ、過去を振り返れば、
三島由起夫の侵入は許してしまってい
るのだ。
 都会の真ん中で一般市民をシャット
アウトしている自衛隊など、平和国家
・日本には必要ないはずだ。自衛隊は
まとめて郊外へ移転させ、残った土地
をもっと有効に活用したほうがいい。
 冷戦が終結し、いま世界各国が軍事
支出を削減している。ドイツは軍隊を
五〇万人から三〇万人へ削減する。そ
んな中で、日本だけが防衛費を拡大し
続けている。そのカネは、主として防
衛庁の官僚のために使われている。組
織は一度出来上がると膨張を続けると
いう典型だ。彼らは自分の存在を正当
化させるために、あの悪名高い『防衛
白書』を発行し、崩壊したソ連をいま
だに「仮想敵国」に想定している。
 日本政府は平和外交を自認している
が、経費削減というと、外務省予算が
真っ先にカットされてしまう。なぜ、
かわりに防衛庁予算を削らないのか。
こういった予算配分は不公平である。
 外務省は人材不足で、ケニアなどア
フリカをはじめ全世界の日本大使館に
は、外交官がアメリカやイギリスの三
分の一しかいない。0DAの運用状況
を監視する場合など、現地で外務省が
きちんとチェックすることが最も重要
なはずだ。
 外務省を訪れると、大使館貞も含め
みな呪るく優秀で、受付の応対も丁寧
で入りやすい。「外国人」である私を味
方として扱い、協力してくれる。市谷
駐屯地とは大違いだ。
 もちろん私は外務省の肩ばかり持っ
ているわけではない。北方領土の問題
では、彼らとケンカしている。それで
も、防衛費を減らすことができなけれ
ば、不気味なレインコートの官僚より
自衛隊の兵士にこそ高い給料を支払
い、問題を起こさないような優秀な人
材を集めるべきだ。しかしそれよりも
むしろ外務省の為に予算を使うべき
だ。
 日本の国家予算をみていると、防衛
費が毎年増え、一方で外務省予算は頭
打ちだ。これからの日本を考えるとき、
防衛と外交と、どちらが大切かは明ら
かなはずである。  (上智大学教授)
竹下派の内輪ケンカを契横に、自民
党が混乱を続けている.これに対して
は、篭思そっちのけ、あるいは政
治改革に不熱心だとして、何かと批判
が多い。しかし私の意見はまったく逆
で、竹下派内で大いにもめてもらいた
いと思っている.それは今回の出来事
が、派閥の根本的な問題と深くかかわ
ってくるからだ.
 これまで派閥に関して何か問題が生
じると、まず派閥の鮮消が主張された。
だが、自民党から派閥を消し去ってし
まうことは、どうも納得できない.と
いうのは、現在の自民党には派閥の機
能がどうしても必要だからだ.
 たとえば自民党のリーダTである総
裁は、派閥間の調整によって選ばれる.
もし派閥が解消されれば、総裁になる
ためには過半数の票をすべてカネで買
わなければならなくなる.現在よりも、
さらに汚い金権政治がはぴこることは
必至だ.
 そればかりではない。渡閥の制度自
体は、それほど不合理ではない。村文化
社会をベースに人間関係を作り上げて
いく日本人の価値観にも、見事漑合致
している.また海外をみても、オースト
ラリアの最近の労働党のように、派閥
の導入によって初めて政権に安定性が
出てきたという前向きの評価もある。
 むしろ派閥の弊菩の根は、その存在
自体ではなく、竹下派の拡張主義にあ
る.竹下派がカネのカにものをいわせ
て田中角栄の時代かち徐々に勢力拡張
を図った結果、自民党円の微妙な渡閥
バランスを崩してしまったことであ
る.したがって派閥の弊害を是正する
第一歩は」その拡張主義を抑えるこ七
だ.自民党内に派閥の人数制限を設け、
ことえば一つり焉が五〇〜六〇人Z
上になればその派閥を分割させるとい
う具合だ.そうした中規模の派閥がい
くつか存在して、お互いに切磋琢磨す
るようになれば、派閥は再びうまく機
能するはずだ。
 自民党の派閥政治でこれまで感心さ
せられるのは、政権を担当する派閥の
リーダーが次々に交代することによ
り、政権の安定性を保ってきたことだ。
派閥のリーダーの中にはリベラルな人
も、保守的な人もいる。彼らが次々に政
権を交代することは、ある意味でアメ
リカの共和党、民主党間の政権交代と
通じるところがある.
 今回町政治改革にからんで、派閥の
温床となる中選挙区制に代えて、小選
挙区制を導入すべしという議論が出て
いる。しかし小選挙区制でも、党の立
候補者を一人に絞る過程で腐敗や党執
行部の独裁が生じるおそれがある。実
際に小選挙区制をすでに採用している
外国では、こうした点が大きな問題に
なってきている.このように考えると、
中選挙区制もそれほど捨てたも秒では
ない.自民党の党内事情さえしっかり
していれば、中選挙区制にも弊害は生
じない.いま日本の政治に必要なのは、
選峯心制度の変更ではなく、自民党の派
戌の人数制艮、   (上智大学教授) 
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