週刊東洋経済 

1995.11.18 週刊東洋経済
英会話教室へ行くより
ティーフ・リス〓ンク
1995.10.21 週刊東洋経済
中国の核実験は
日本にも責任ガある
1995.9.23 週刊東洋経済 
フラックホトル・エコノミI
学長に就任後、多くの人々から、ど
んな教育をしたいのかと聞かれて私
はその度に、英語を入学試験の必須
科目から外すべきだと答えている。
 しかしこれは、英語軽視を意味す
るのではなく、むしろその逆だ。新入生は英語か他の外国語の徹底的な学習が求められ、大学は彼らが四年間にわたって外国語学習を続けるためのインセンティブを提供すべきだ。
 こうした提案をするのには、三つ
の理由がある。
第一は、多くの優秀な学生が、受
験英語の教科書(読み書き)英語に
対し嫌悪感を増しているという事実
である。第二は、英語以外の外国語
の学習を促したいからだ。大学は中
・高等学校よりも、もっと効果的に
英語を教えることができる、と考え
ているからである。
 どうやって、より効果的に教える
か。これまで、多くの進歩的な外国
語教師たちは、教科書教育がダメな
ら、会話に力を入れればよいと考え
てきた。しかし、教室での会話授業
は、言葉を身につける方法としては
決して効果的とはいえない。さらに、会話の練習を提供することは大学の役割でもない。
 その代わり我々は、深い聞き取り
能力(私はディープ・リスニングと
呼んでいる) を促すような方法を用
いる。学生に面白いストーリーのテ
ープを与え、彼らがその意味を理解
できるまで、自分で時間をつくって
テープを繰り返し聞いてもらう。そ
の後に初めてテキストを与え、内容
についての会話を促したりする。
 確かに、日本ではすでに多くの人
がカセットテープやビデオを使って
英語を学んでいる。しかし、英会話
教室に多額のおカネを払っている学
生と同様に、その結果に失望するこ
とが多い。その理由は、聞き取りを注意深くしていないからである。彼らは聞き流すか、あるいは聞きながらテキストを見ている。結果として、彼らのリスニングは浅く、潜在的な意識の中に入り込まない。
 子供はどうやって言葉を覚えるだ
ろうか。聞こえることを理解したい
と思って、注意深く聞くことによっ
てである。しかも彼らには、それを
助けるテキストも翻訳もない。注意
深く聞けば、耳に入った言葉が、潜
在的な意識の中に浸透する。そうし
て初めて、子供は会話を始め、読む
ことを覚えるのである。
 学生だけでなく大人でも、子供と
同じようなアプローチで、言葉を覚
えることができる。
 聞き取り能力の向上は大学の役割
に適している。何故なら、優れた聞
き取り能力は優れた読解能力ヘのカ
ギだからだ。ほとんどの日本人は、
英語を自分の「意識」を使って読む
ので、時間がかかり、苦痛が伴う。
しかし、音を「無意識」に聞けるよ
うになれば、その意味は自然に素早
く浮かび上がる。
 私の提案の狙いは、学生に自分の
専門分野の原書を早く、容易に読め
る訓練を施すことだ。これが、今の
国際化の時代に、日本の大学に求め
週刊東洋経済られている真の役割である。
 (多摩大学学長)
日本は中国の核実験に対し強硬な
抗議を行い、さらに報復として、対
中援助のカットにまで踏み切った。
しかし、日本政府の中に、この核実
験の責任の一端が、日本にもあると
いうことを理解している人間がいる
だろうか。
 1950年代に中国は三回、アメ
リカから直接・間接に核攻撃の脅威
にさらされた。最初は50〜弱年の朝
鮮戦争。インドシナ独立戦争中の54
年、ディエン・ビエン・フーの戦い
の際に、アメリカは中国の対ベトナ
ム支援に対抗するため、再び核兵器
の使用を検討した。さらに58年の台
湾海峡危機では、アメリカは直接、
中国を攻撃すると脅している。この
ときソ連は、対中支援の一環として
の核兵器の傘を拒否。これが中ソ紛
争へと発展し、中国は核兵器開発の
決定を下した。
 こうした時期に、日本は何をして
いたか。それは、アメリカの政策に
対する全面支援である。いま、中国
の核兵器開発に文句を言うのは子供
じみている。
 不運なことに、国際外交ではこれ
に似たような子供じみた例は多く存
在する。大人の世界では、もしAが
Bを引き起こしたの頂ら、責任の所
在はAにある。因果関係の原則を知
らず、結果としてのBを非難したが
るのは、非常に幼い子供だけだ。し
かし国際外交においては、Aを忘れ
Bを非難することが、極めてノーマ
ルなことと考えられている。
 ボスニア紛争では、世界はセルビ
ア勢力の侵略行為を非難している。
しかし、なぜセルビア人がそうした
行為に及んでいるかということを皆
は忘れている。つまり、五〇年前に
セルビア人が、ドイツの侵略者と組
んだイスラム・クロアチア勢力から
受けた残虐行為や、92年にイスラム
に支配された単一国家ボスニアを、
無知な西側がつくり上げたことを忘
れているのである。
 何年もの間、アメリカはPLOの
テロ行為を非難してきた。アメリカ 
は、なぜテロが引き起こされたのか
を忘れていた。それは、イスラエル
によるパレスチナ領土の不法な占領
を、アメリカが支持したためにほか
ならない。
 また、60年代に西側は、北ベトナ
ムのサイゴン政府への攻撃々、侵略
行為として非難した。54年のジュネ
ーブ合意の受け入れを西側が拒否し
たことが、その攻撃の原因であるこ
とを西側は忘れていた。
 日本は、アメリカの核兵器開発、
それに伴う東アジアヘの軍事力の配
置に対して、これまで一度として異
議を唱えたことがない。それどころ
か、日本は基地を供給することで、
全面的にアメリカをサポートしてき
た。その過程で、中国は巨大な不利
益を被ってきた。
 日本の中国に対する態度は、(原因
である)Aを忘れ、(結果である)B
に文句を言っているのに等しい。中
国に厳しい対応をするのなら、同時
にアメリカの軍事政策を非難する必
要があるだろう。日本はもっと大人
の振る舞いをするべき時に来てい
る。       (多摩大学学長)
バブル経済が始まった時、私と何
人かのエコノミストは、地価の急激
な上昇に対する警告を発し続けてき
た。
 われわれは、日本に本山ヨの土地不足は存在せず、非現実的な日本の土地税制、過熱投機や銀行の愚かな融資姿勢が問題のカギであると主張した。だから私は、土地の有効活用を催す地価税の導入を非常に好ましいこととして評価した。
 しかし今日、日本は全く異なる問
題に直面している。バブル経済は崩
壊し、日本はブラックホール経済に
陥った。土地の値下がりが、さらな
る地価下落を招くという悪循環を加
速している。その結果、金融機関の
抱える不良債権は自動的に増加し、
金融危機を深刻化させる。
 日本経済は今、外側への爆発から
内側への破裂へと変容している。
 確かに、どの国の経済にも好不況
の波はある。しかし、例えばアメリ
カでは、常に賢い投資家がいて、彼
らは好況のピークで売り、不況の底
で買おうとする。したがって、景気
変動の波が、それほど大きく振幅す
ることはない。こうした西欧的な逆
張り投資家が、結果として最近の日
本の株価の押し上げに大きな役割を
果たしている。彼らは、経済関係の
こユースが最悪の時に買うことを好
むのである。
 アメリカの投資家とは対照的に、
日本の投資家はあまりに情緒的であ
る。彼らは、他の皆が買っている時
に買いたがる。彼らは、経済関係の
ニュースが悪い時に買いたいとは思
わない。
 こうした状況で、日本の投資家の
心理を変えるためには、何か劇的な
ことをしなければならない。われわ
れは、過去に土地投機で巨額のカネ
を稼いだ人間が日本に数多くいるこ
とを知っている。なんとかして、こ
うした人々を不動産マーケットに呼
び戻す必要がある。
 ひとつの分かりやすい方法は、投
機防止を狙って課された税制(特に
地価税と特別土地農)を緩和す
ることである。また、土地売却益・
譲渡益への課税に対する何らかの緩
和措置も必要だろう。
 確かに日本では、土地の値段は依
然として高すぎる。過熱投機の再発
を警戒する声もあり、その懸念にも
一理ある。しかしそれは、取らなけ
ればならないリスクだ。ブラックホ
ールに吸い込まれるリスクに比べた
ら、はるかに小さいリスクである。
たとえ投機が再発したとしても、再
び課税を強化するなど、それをコン
トロールすることはいつでも可能な
はずだ。
 狙いとすべきことは、地価の下落
をたとえば今の水準でとどめ、でき
る限りその水準近辺で地価を維持す
ることである。つまり土地の底値を
形成することだ。
 それが結果的に、所得の上昇に伴
い普通の日本人がリーズナブルな価
格で家を買えるような、安定的な地
価の実現につながるだろう。別の言
葉で言えば、ソフトランディングが
重要なのである。
        (多摩大学学長)
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