週刊東洋経済

1995.4.1週刊東洋経済
信組スキャンダルと
北方領土問題は根が同じ
1995.3.4 週刊東洋経済
外国人の犯罪に
断固たる措置を
1995,2.4 週刊東洋経済
阪神大震災を教訓に
積極的なデクション″を
最近、私は日本とロシアの関係につ
いての会議に参加した。そこでは、議
論の大半が北方領土問題に費やされ
た。左翼的な参加者でさえも、日本の
主張は正しく、モスクワは日本に北方
領土を返還する義務があるという立場
をとっているように思われた。
 私はこの問題に関して、1951年
のサンフランシスコ平和条約は、日本
政府が「クリル諸島」に関するすべて
の権利を放棄したと明確に述べている
と指摘した。さらに同年10月19日、日
本政府は国会において、条約で使われ
ている「クリル諸島」には択捉島と国
後島を含むことを認めている。日本が
北方領土返還を望むならば、こうした
二つの重要な事実を考慮しなければな
らない。例えば1951年10月19日の
日本政府のステイトメントは間違って
いたとか、日本はアメリカに国後島と
択捉島を放棄するよう強制された、と
いった議論をしなければならない。
 つまり、日本の主張は非常に複雑な
法的および歴史的な議論によって、は
じめて支持されるものだ。それにもか
かわらず、日本政府の高官は日本の主
張は一〇〇%正しく、モスクワが北方
領土を返還しないのはまったく非合理
的であり、正義にもとるという外交政
策を振りかざしている。
 東京協和、安全の二つの信用組合を
めぐるスキャンダルも、官僚の物事の
進め方がいかに間違っているかを表し
ている。オーストラリアでは八年前か
ら、EIEの資金の流れはおかしい、
EIEには疑わしいバックがついてい
るのではないか、といわれていた。実
際、私はこの問題を調査しているオー
ストラリアのある新聞から協力を依頼
されたことがある。その新聞の結論は、
EIEには暴力団のカネか、あるいは
韓国からのブラックマネーが流れてい
るに違いない、というものだった。だ
れも、EIEが大蔵省の監督下に置か
れている大手銀行から何十億ドルものカ
ネを引き出すことができるとは思わな
かった。もし、だれかがEIEのトッ
プが東京協和のトップを兼任している
と教えてくれたとしても、われわれは
それを信じなかっただろう。
 官僚は現実に問題が生じていること
を知っているの.に、それをあたかも存
在しないかのように振る舞い、あわよ
くば責任を他の人間に押しっけようと
した。さらに、彼らは黒幕のかかわり
合いを憂慮した。こうしたやり方は、
まさに北方領土問題と同じだ。日本の
官僚は1951年に起こつた事実を無
視し、すべての責任をソ連に押しっけ
た。そして彼らは、過激な右翼分子の
かかわり合いを憂慮したのである。
 日本のなかでは、こうした無責任で
あいまいなやり方は、日本人自身を傷
つけるだけだ。しかし、外交問題では
非常に危険なものとなる。それは、そ
の国の外交全体を歪め、軍事紛争をも
招きかねない。日本は、北方領土問題
について責任ある態度をとるべき時期
に来ている。    (上智大学教授)



 日本では連日のように、外国人によ
るコンビニエンス・ストアや宝石店、
パチンコ店への強盗事件が報道されて
いる。こうした事件が発生するのは、
日本がとても誠実な社会であり、日本
人が警戒を怠っているからである。も
っとも、こうした外国人による犯罪の
増加を批判する人は、逆に反外国人の
差別主義者だと攻撃されてしまう。
 日本はこうした不良外国人の犯罪に
対して、もっと厳しい態度をとるべき
時期に来ている。まじめな外国人が日
本を気に入っている理由の一つは、日
本には犯罪がなく、日本人が寛容であ
ることだ。だが、それはあくまで「空
気」のようなものである。つまり、人々
がお互いに正しく行動することによっ
て、はじめて保証されるのである。
 こうした空気が、いかに壊れやすい
ものであるかを認識している日本人は
少ない。かつては欧米にも、そうした
空気があったが、すでになくなってし
まった。人々が警戒心を持っていなか
ったため、犯罪者はごく小さいリスク
でカネ儲けができることに気が付いた
からだ。いまや、われわれは犯罪に対
して常時、警戒しなければならない。
見知らぬ人間に対しては疑いの目を向
け、犯罪に対しては厳しい処罰を与え
ている。日本にいる不良外国人が、日
本で犯罪を犯すことが容易であること
に気が付いた結果、日本が欧米と同じ
道をたどるとすれば悲劇だ。さらに日
本の右翼的な国家主義者が、外国人の
犯罪を反外国人キャンペーンの材料に
使うとすれば、なお悪いことになる。
 新宿は、いまやアジア人、特に中国
人によって支配されている。犯罪もし
ばしばだ。そこには、正規のビザのな
い不法滞在の外国人がたくさんいる。
しかし、警察がこうした人々を取り締
まろうとすると、いわゆる「人道主義
者」から反外国人的態度だと批判され
るのである。
 最近、わたしはひどい例を見た。自
称留学生のアメリカ人が、日本の有名
な作家をゆすろうとして失敗した事件
があった。その報復のため、かれは日
本にいる留学生が受けられる無料の法
律サービスを利用し、取るに足らない
訴訟で日本人作家に嫌がらせをしよう
とした。日本の弁護士は喜んでこれに
協力し、複雑な法的措置がこの作家を
困らせるために使われたのである。
 このほかにも、まじめな日本人に嫌
がらせをするために、日本の法制度を
利用するヤクザの例は数多い。これは、
多くの日本人が裁判に巻き込まれるこ
とを避けようとするために成功する。
要するに、日本人の尊敬に値する性格
1この場合には法律万能主義ではな
いこと!が、日本人を困らせるため
に悪用されているのである。日本人の
弁護士に仕事を与えるために、日本の
法制度はこうした悪用に手を貸してい
るとさえ思われる。
 早急になすべきことは、日本を犯罪
と法律万能主義の渦治に陥らせないこ
とだ。       (上智大学教授)
兵庫県南部地震の被害をテレビで見
ていて、救援活動の後れに怒りを覚え
た。それは私に一〇年前の日航磯墜落
事故を思い出させた。その時、自衛隊
が事故現場に到着したのは翌日の昼だ
った。地元の人たちが自衛隊よりも一、
二時間早く到着し、すでに数人の生存
者を保護していた。事故直後にはもっ
と多くの生存者がいたが、一晩たつ間
に死亡してしまった。
 ここで自衛隊の隊員を批判しようと
いうのではない。彼らのなかには優秀
で勇敢な人たちがいるだろう。だが、
その組織には明らかに問題がある。自
衛隊はルワンダ難民に救援物資を与え
るため、アフリカヘ隊員を派遣するこ
とができる。一方、関西の基地からほ
んの数キロしか離れていないところで
必死に助けを求める日本人には、有効
な援助をすることができないのだ。

 批判されるべきは自衛隊だけではな
い。長い間、わたしは日本の消防団は
すばらしい組織であると聞かされてき
た。その消防隊員が、神戸の火災には
まったく対応できなかったのである。
わたしの母国オーストラリアでは、遠
く離れた地域の山火事でも、すぐに近
隣の消防自動車やボランティアが出動
する。ヘリコプターも火災現場に急行
する。だが、神戸では二四時間ほとん
ど手つかずの状態だった。水がなかっ
たというが、火災現場のすぐ近くには
大阪湾があった。これまで自民党は地
方の土建屋に数千億円もの資金を与
え、日本の美しい海岸線に滅多に発生
しない津波を防ぐためのコンクリート
の壁を作らせてきた。もし、そのほん
の一部の資金を使って緊急用のポンプ
を設置していたら、神戸の火災の大部
分を防ぐことができたのではないか。
 神戸の火災の一具っ最中、テレビでは
東京消防庁の人間が高価なコンピュー
タを使って、東京で地震が起こったと
きの被害のシミュレーションをやって
いた。しかし、その一方で、関西地区
における地震発生の可能性は見逃さ
れ、準備がほとんどなされていなかっ
た。日本が地震予知に関する設備に何
十億ドルもかけていることは、アメリカ
ではまったく非科学的だと笑われてい
るのである。
 多くの西欧の友人は、自動車や船舶
をあれほど効率的に作ることができる
日本が、地震への対処には非効率的な
のに驚く。それに対して、わたしは日
本人は受動的な国民であると説明して
いる。日本人は、ある決まった仕事と
時間が与えられたときには効率的にな
る。だが、予期せぬ事態に対処するこ
とは苦手なのだ。西欧では災害が起こ
ると「アクション・コミッティー(行
動委員会)」が作られるが、日本では「リアクション・コミッティー(対策委員会)」が作られる。
 それは経済でも同じことだ。日本は
西欧に追いつくのは得意だ。しかし、
将来の新しい情報通信産業を創造して
いくのは苦手だ。日本人はもっと行動
的になるべきときだ。(上智大学教授)
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