週刊東洋経済
1994・7・9 週刊東洋経済
悪税の消費税を廃止
し物品税を復活せよ
1994.8.6 週刊東洋経済
自衛隊違憲問題における
社会党の過去の.″過ち″
1994・4・9 週刊東洋経済
官僚は日本経済を
蝕むガンだ
英語には次のような文句がある。す
なわち、「人生にはどうしても避けられ
ないものが二つだけある。それは税金
と死だ」。私は日本で税金を納めると
き、この二つが同じように不愉快なも
のであることを痛感する。
 私は、日本の不合理な税制に我慢が
ならない。意図的に作られた赤字会社
や政治家、農家、エセ宗教団体など、
多くの人々が税金を支払っていない。
その結果、正直に所得を申告する人々
が重い負担を背負っている。
 特に、地方税には腹が立つ。多くの
国々では、地方自治体は土地税や公共
サービスヘの対価で収入を得ている。
だが日本では、正直な納税者は国へ所
得税を支払った後、さらに地方自治体
へも自動的に所得税を支払うことにな
っている。これはダブル・パンチだ。
 こうした状況のもとでは、私のよう
な納税者には間接税が有利なのは明ら
かだ。しかし、日本は選択を誤った。
自動車や宝石など特定の物品を対象と
した物品税を廃止し、課税対象が広範
囲にわたる消費税を導入したのであ
る。これは、良税を悪税で置き換えたよ
ぅなものだ。さらに現在、その悪税の税
率を引き上げようとさえしている。
 日本や西欧における消費税重視は、
戦後の理論経済学者がもたらした弊害
の一ノだ。これらの学者は理論的純粋
性を崇拝する。そのため、売上税はモ
ノでもサービスでもすべて平等に課す
べきである、という教科書的発想しか
持っていない。しかし、これは子供じ
みたアプローチであり、非現実的だ。
 三〇年前の経済学者はもっと現実的
アプローチをしていた。彼らは、良い
税の条件は公平であること、かつ徴税
しゃすいことの二つであるとした。さ
 らに税制が社会的に望ましい目的のた
 めに用いられるなら、なお良い。だが、
広範な消費税は、こうした条件を満た
していない。この税は高い逆進性を有
し、徴税にも手がかかるのである。
 日本は消費税を、拡大した物品税に
置き換えるべきだ。物品税は、低所得
層よりも高所得層が消費しそうなモノ
やサービスに課すことができるため公
平である。徴税が容易な対象を選択す
ることもできる。自動車やタバコなど
社会的コストのかかる物品には、重く
課税することもできる。
 旧共産圏諸国で有効だった数少ない
ものの一つに税制がある。そこでは、
ぜいたく品には一〇〇%以上の重税を
課す一方、所得税は無きに等しかった0
その結果、価格体系が歪んだのは確か
だが、それは本当に大きな問題なのだ
ろうか。例えば、高所得者がテレビを
買いたいと思ったら、値段など気にし
ないだろう。こうして、彼らは実際に、
所得に見合った税を支払うのである0
 よしんば日本が消費税に固執すると
しても、せめて三段階の税にすべきで
ある。すなわち、一般向けの物品、半
ぜいたく品、ぜいたく品および社会的
コストの大きい物品、の順に税率を高
くして\いくべきだ。 (上智大学教授)
社会党が、自衛隊問題で大きな方向
転換を行った。しかし、その転身を弁
護するのは難しい。社会党がここにき
て突然、前言を翻し、自衛隊は合憲で
あると言い始めたのは、あまりにも異
常である。原理原則を欠いている。
 正直言って、社会党の自衛隊問題へ
の対応に失望させられたのは、これが
初めてではない。日本国憲法を厳密に
解釈すれば、自衛隊が違憲である可能
性は高い。しかし、すでに実在し、多
くの日本人が漠然ながらも存在を認め
ているものの合法性を、ある特定の政
党が否定することは、政治的に危険で
ある。さらに悪いことに、それは自衛隊
内部の軍国主義者や非民主的勢力に、
社会党に対し非民主主義的な態度をと
る口実を与えることになった。彼らは、
社会党が自衛隊の合法性を認めないの
で、自衛隊も社会党の正当性を認める

必要はないとまで口走るようになっ
た。こうした考え方はファシズムヘの
第一歩であり、戦前に左翼勢力の弾圧
をもたらした発想と酷似している。
.社会党にとりはるかに賢明なアプロ
ーチは、平和志向の自衛隊は現行憲法
の下でも受け入れられるが、軍国主義
志向の自衛隊は容認できないというこ
とだった。これによって、社会党は自
衛隊問題ではるかに柔軟性を高めるこ
とができ、さらに重要な点は、社会党
自身が自衛隊内部の不穏な動きをチェ
ックできるようになることだった。
 太平洋戦争時代に育ったオーストラ
リア人として、私は第九条がなぜ日本
国憲法に加えられ、当時の多くの日本
人がそれを受け入れたかを自分なりに
理解している。それは、日本の軍隊は
明らかにその他の国の軍隊とは異なる
からだ。日本人は軍国主義的ではない
が、集団主義的である。問題はここに
ある。日本ではある集団が形成される
と、その存在を維持し拡張させるため
なら何でも行う。その目的遂行のため
に、集団のメンバーには忠誠と頼律が
要求される。もしその集団が企業であ
れば、その生存のためのダイナミズム
や規律は高く評価される。
 しかし、軍隊の場合はそうしたダイ
ナミズムは著しく危険である。軍隊の
拡大をチェックできるライバルは存在
しない。絶対的な忠誠や規律を強調す
ることは、簡単に軍国主義的ファシズ
ムヘとつながる。
 すでに、そうした危険な兆候は一部
に出始めている。自衛隊内部では平和
主義的な雰囲気や反戦的な感情は、ほ
んのわずかでも認められなくなってい
る。裁判所や、通常は反軍国主義的な
マスコミでさえ、軍隊は隊員に対し絶
対的な忠誠を要求する権利があるとの
理由から、自衛隊内部の抑圧を容認し
ている。西側はそうした兆候をきわめ
て危険視しているのである。
 もし社会党が最初から民主的で開か
れた自衛隊なら受け入れると主張して
おれば、現在のそうした危険な兆候を
チェックすることができるはずだ。
           (上智大学教授)

 最近、日本に対する悲観論が多い。
アメリカ経済が復活する一方で、日本
経済は衰退に向かっている、というの
である。しかし、私はそれほど悲観し
てはいない。日本経済のファンダメン
タルズは依然として強い。アメリカの
景気回復も短命に終わる可能性があ
る。アメリカのような消費主導の社会
では、消費者が新車や住宅、テレビな
どを買うのを我慢できなくなったと
き、不況は終わりになる。しかし、い
ったん彼らが消費を謳歌したあとに
は、経済は再び停滞するのである。
 これは、経済が回復に向かうと英国
と同じようにすぐに輸入が急増するこ
とで分かる。そうした国では、需要に
見合うだけの生産能力がない。・過去の
誤った政策が産業基盤を崩壊させ、長
期間持続する生産力に基づいた景気回
復を不可能にしてしまったのである。
一方、日本のファンダメンタルズ、特
にその産業基盤は依然として強固だ。
 しかし、日本でも誤つた政策が悪影
響を及ぼしている。その一例が官僚の
問題だ。それは、いまや経済だけでな
く社会をも蝕むガンになっている◎
 二〇年以上にもわたって、官僚は円
高を防ぐための構造改革を妨げてき
た。輸入を促進し、新たな産業分野を
発展させるために規制緩和をすべき現
在においても、官僚は依然として複雑
な許認可制度に執着している。
 例えば、私の友人はこユージーラン
ドのプレハブ住宅を日本に導入しよう
とした。彼は、日本政府が貿易黒字の
削減だけでなく、良質で安い住宅を増
やすためにも、そうした輸入を歓迎し
ていると聞いたからだ。しかし、その
プレハブ住宅がニュージーランドや他
の国でたくさん売られ、地震やム嵐に
対する耐久性の証明書もあり、二〇年
前には日本でも販売されていたにもか
かわらず、もう一度日本での販売許可
を得るために、膨大なカネと書類を費
やさねばならなかった。
 より大きな弊害は、官僚が新しい技
術を統制しようとするときに生じる。
高精細テレビ(HDTV)がその好例
だ。西側は、日本は官僚がケーブル・
テレビを規制しているため、テレコミ
ュニケーション分野での競争に負け
た、と受け取っている。官僚はまた、
衛星通信のコーディングおよびデコー
ディング技術から外国勢を排斥しよう
とした。官僚が日本国有の技術に執着
したため、一〇年もの歳月を費やした
ものの、結局WoWoWは倒産の危機
に陥ってしまったのである。
 いまやコメ論争が盛んである。日本
では五〇年もの間、官僚がコメの販売
を統制してきた。しかし、彼らは数百
万トンのコメを輸入し、それを販売する
というだけの問題にすら、対処するこ
とができなかった。さらに他の公共サ
ービスも言うに及ばない。外国人は驚
いている。工業製品をこれほどまでに
効率的に生産する日本が、なぜ空港を
きちんとつくることもできないのか
と。       (上智大学教授)
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