週刊東洋経済
1993・6・19 週刊東洋経済
ボスニア内戦解決に
史国エロ湾方式を生かせ
週刊東洋経済1993.4.24
東西二分社化で
NHKの活性化を図れ
週刊東洋経済1993.3.27
癒しがたい日本人の
″現象学的″性癖
 最喝全く性格の異なる出来事が、
期せずして同時に起こつた0旧ユーゴ
内戦が国際政治の中心舞台で脚光を浴
びる一方で、中国と台湾の正式な代表
者がシンガポールで会談し、意見の食
い違いを解決する方策について初めて
友好的に話し合ったのである0
中国は内戦の解決策につい.て、価値
ぁる教訓を提供している。すの教訓と
は、内戦の終結には一方の陣営が他方
の雁首を也窒に粉砕するまで殺戦を繰
り返すより、両陣営を切り離し、時間
をかけて妥協案を探るほうがはるかに
ましであるということだ。これは、ま
さに中国が実践してきたことである0
 確かに台湾の国民党政権を擁護する
アメリカの政策は、多くの問題点を抱
ぇていた。台湾政府が推二の中国の合
法的な政権であるとしたことは、その
後数十年間、日米のアジア政策に大き
な歪みを生じさせた。しかし、現在の
北京政府を含めすべての人々は、台湾
の分離政権を作ったことは結果として
世界や中国にとり好都合だったと認め
ざるをえないだろう。
 これと同じ解決策を、どうして他の
地域の内戦にも適用できないのか0励
ぇばベトナムでは、アメリカは愚かに
もサイゴン政府を駆り立て反政府の共
産党勢力を一掃しようとした0その帰
結として、アメリカはサイゴン政府を
完至に見捨てざるをえなくなってしま
った。初めから両者を分割し第二の台
湾状態を作れば良かったのだ0カンボ
ジアで、もしクメール・ルージュに対
し支配地域での政権樹立を認め、その
後で妥協の道を探ることにすれば、現
在の状況はおそらく改善しよう0国運
や協力国は、その国境を監視するだけ
ですむのである。
 悲劇は、ボスニアである。イスラム
教徒の政府は、クロアチア支援による
選挙の勝利だけで国際的な承認を与え
られた。西側は、統一国家という概念
にとらわれ過ぎている。お互いに憎悪
する人々を西側が国家として承認した
いと望む地域の境界に無理に二緒に住
まわせようとするから、内戦状態に陥
る。そうした地域には国際的な承認な
どは与えずに、国連による管理を強化
したほうがはるかにましである。
 その際、国連の軍事力不足が指摘さ
れるかもしれない。しかし、香港の事
例が参考になる。英国は長い間、ネパ
ール人兵士を使って香港を守ってき
た。ネパールでは雇用拡大や外貨獲得
につながり、とても満足していた0国
連も、ネパールのJぅな経済援助を必
要としている国々の兵士からなる軍隊
を構成すべきである。日本はその資金
提供をすべきであり、自らの軍傑派遣
にカネを浪費すべきではない。
 これはまさに一石二鳥である0国連
は実戦に役立つ軍隊を、発展途上国は
経済援助を獲得できる。そして、もし
これによって日本国内における自衛隊
派遣の合憲性に関する不格好な論争に
終止符を打てば、それはまさに「一石
三塁となる。  (上智大学教授)
私は二〇年間、日本に住んでいるが、
すっかりNHKの大ファンになってし
まった。
 日本国民を啓発し、国としての連帯
感をもたらすなど、NHKはこれまで
重要な役割を果たしてきた。しかし近
ごろでは、その報道姿勢にやや控えめ
さが目立つようになっている。そのた
めに汚職や犯罪の勇気ある報道では、
国民はますます民放のチャンネルに頼
らざるをえなくなっている。
 しかも最近では、NHKが経営問題
のゴタゴタで動揺していることも否定
できない。前会長のスキャンダルやヒ
マラヤ小国のドキュメンタリー制作で
発生した″やらせ事件″などである。
NHKの人と話をすると、NHKも大
組織に共通の官僚化が進み、有能な人
間であっても良い仕事をするのがます
ます閑単になってきているという印象
を受ける。
 こうした諸問題について、一つの単
純な般肝決策を述べてみたい。
 日本では一極集中問題について、こ
れまで白熱した議論が展開されてき
た。その対策として、新しい首都の建
設が多くの人から提案された。しかし
問題の本質は、政府がどこにあるかと
いった問題ではなく、むしろ文化的な
一極集中である。マスコミ、大学、そ
の他の文化機関が東京に集中している
ために、有能な人々が必然的に東京に
引き寄せられてくるのである。
 こうした文化的な吸引カを打ち破る
一つの簡単な方法は、NHKを分割し
て、同じ規模と権限を付与された二つ
のNHKを作ることであろう。一つは
関東を拠点とし、もう一つは関西に基
盤を置く。そして、それぞれが独自の
番組を制作し、全国への放映をめぐつ
て競い合ったり、協力したりすること
である。
 そうなれば、同じ政治をテーマに関
東と関西がそれぞれの座談会番組を制
作し、競争するようになるかもしれな
い。関西はよりビジネス問題に集中す
るよう忙なるかもしれない。
 また二つのNHKの間で、人間の移
動も活発化してこよう。十分な活躍の
機会を与えられていないと感じる東京
のディレクターが、関西への配転を申
し出るか.もしれない。
 アメリカでは、″CNN現象々が巻き
起こつている。一〇年そこらの間忙、
CNNはアメリカばかりでなく、世界
のTVを席巻するようになった。しか
もCNNはワシントンやニューヨーク
が本拠地ではない。アトランタという
地域中核都市を基盤とするために、多
元中継に大きく依存している。しかし
それがかえって、CNN成功の塵要な
背景となった。アメリカや世界中に散
らばる有能な人材を、積極的に活用で
きるようになったからだ。
 もし二つに分割化されれぼ、NHK
は再び活性化することになろう。同様
に、日本の一極集中も終焉へ向けてそ
の第一歩を歩み始めることになる。ま
さに一石二鳥である。 〔上智大学教授)
外国の研究者が日本文化を表現する
とき、しばしばか現象学的な(phenom
enological)々という言葉を用いる。彼
らが意味しているのは、日本人は目の
前の現象にのみ注視する傾向が強く、
そうした現象の原因や結果については
それほど関心を示さないということ
ゼ。そうした日本人の性癖は、時には
美徳になる。われわれ日本人以外の国
民は原因や結果について何時間もあれ
これ考えるくせに、自らが現在直面し
ている状況についてはろくに時間を割
かないことが、しばしばあるからゼへ
 しかし、日本人のやり方もまた完至
無欠ではない。たとえば、最近では誰
もが関心を寄せるようになった今回の
バブル不況である。中曽根元首相は、
宮沢首相が自民党総裁に再選されるか
どうかは、日本経済を不況からいかに
立ち直らせるかという宮沢首相の手腕
次第だと語り、この発言は広く報道さ
れた。中曽根元首相がカムバックを図
りたいために、こうした発言を行った
とまで示唆した報道もあった。しかし、
こうした報道の中には、当の中曽根氏
を含め日本人の誰もが気づいていない
大きな矛盾があるようにみえる。すな
わちその矛盾とは、現在の不況の困と
なったバブルの膨張に貢献したのは中
曽根氏自身であるということだ。
 多くの論者は宮沢氏が減税や政府支
出拡大を行わないことを批判すること
がいいことだと思っている。宮沢氏が
すこし慎重すぎるのは事実かもしれな
い。しかし、そうした批評家は株や土
地のバブル期にはいったい何をしてい
たのだろうか。もし忘れてしまったと
いうなら、私が思い出させてあげよう。
彼らは、バブルが禾釆永劫続き、日本
の地価や株価がべらぼうな値段まで高
くなることには正当で、論理的な根拠
が存在すると確信していたのだ。
 当時は、バブルが破裂し、それが日
本や世界経済に深刻な打撃をもたらす
と警告したのは、ごく少数でしかなか
った。私たちは資産価格の急膨張の後
は、やがて破壊的なデフレ状況が到来
すると警鐘を鳴らしてた。特に家賃で
のリターンがわずか一〜二%しか期待
できないのに、オフィス・ビル建設のた
めに土地を買うのは狂っているとしか
いいようがない。ましてや、銀行がそれ
を融資するというのは狂気の沙汰だ。
 たしかに、外国でも土地や株式の急
騰がある。しかし、これだけ価格とリ
ターンの索敵がある囲も珍しい。今日、
不況下ながら日本のPER(株価収益
率)は依然として五〇倍前後、他の国々
の約三倍の水盤丁である。地価は依然と
して他の国々の四、五倍前後。日本経済
の力強いファンダメンタルズを考慮し
ても、あまりにも高すぎる。しかし多
くの日本人は、相場はすでにボトムに
達し、すぐにでも再上昇が始まると考
えているようにみえる。もしその期待
が裏切られれば、宮沢氏を慎重すぎる
として責めたてるのだろう。むしろ彼
らが責めるべきは、自らの過度な楽天
主義のほうなのだが。(上智大学教授)
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